こんにちは、今日は和算の中から「さっさ立て」を紹介します。
「さっさ立て」の内容は中学校二年生の連立方程式として扱えます。
連立方程式の導入として先生が実際にやって見せることで子ども達の興味関心を引き、それ以降の学習に意欲的に取り組むことができるようになります。
こうした、先生が実際にやって見せられるパフォーマンスのような授業は、子どもたちにとって
と思ってもらいやすいです。
こうしたネタの引き出しを沢山もっているといざというときに便利です。
和算とは
そもそも和算とはなんでしょう。
和算とは江戸時代の日本人が学んでいた数学のことです。
和算始まりのきっかけは「塵劫記(じんこうき)」です。
ねずみ算やつるかめ算などは有名ですね。聞いたことがある人も多いと思います。
内容が面白くストーリー形式になっているものも多くあるので、中学生でも十分に授業として扱うことができます。
「〇〇算」と聞くと、中学受験をするような子達が解き方だけ覚えるようなめんどくさそうなものだという感じがあります。しかし、西洋の数学が日本に入ってくる前の日本人が考えてきた和算に触れることは、昔の人の考え方を学ぶよい機会ですので、余裕があるときや困った時には和算を調べて授業に使ってみることをおすすめします。
今日は、その中から「さっさ立て」を紹介します。
ではいきましょう!
さっさ立て
さっさ立ての内容は以下の通りです。
『さっさ立の事 たとへば、銭三十文渡して、一文のかたへと二文のかたへと
一度一度にさぁさぁと声をかけてわくる時、其声数を四五間も脇に居て聞に 十八声ならば一文の方に六文有へしと答ふる也』
ちょっとよくわかりませんね笑
なので、これを現代語訳にしてみましょう。すると以下のようになります。
『さっさ立ての事 例えば、銭三十文を(相手に)渡して、
一文か二文の方へ(置く度に)一度、一声さぁと声をかけて、(置き)分けるとき、
その声の数を四、五間離れていて聞いて、十八声ならば、一文の方に六文有ると答える。』
少しわかりやすくなりましたが、まだイマイチですね。
もう少しわかりやすく順序立てて書くと以下のようになります。
- Aさんが30文持っておりこれをBさんに預けます。
- Bさんはそのお金を1文または2文に分けます。
- Bさんが1文または2文に分けるとき、必ず一声「さぁ」と声を出します。
- Bさんが分けている間Aさんはその様子を見ずにBさんの「さぁ」だけが聞こえる状態です。
- そこで、Bさんが「さぁ」という声を18回言って分けました。
- すると、AさんがBさんの方を見ずに「1文の方には6文ある」と答えました。
いかがでしょうか。意味は分かりましたか?
なぜ、Aさんは分けている様子を見ていないのに、Bさんの「さぁ」の声だけで1文の方にいくらあるかわかったのでしょうか?考えてみてください。
解説
では、解説にうつります。
Aさんが答えを導くために使ったのがBさんの「さぁ」の回数です。
もし仮に、Bさんが30文を全て2文の方に置いたとしましょう。すると、掛け声の回数は
30÷2=15(回)
となります。
つまり、Bさんが最速で分けるときには掛け声が15回必要となります。
ここから、2文に置く分のお金を1文の方に置いていくとどうなるでしょうか。
2文に置く回数を1回減らすごとに1文の方に置く回数は2回増えますよね。
つまり、掛け声の回数が15回(全部2文の方)からスタートして考えると、声の数、1文の方に置いた回数、1文の方に置いた文数、2文の方に置いた回数、2文の方に置いた文数は以下の表のようになります。
声の数 | 1文の方に置いた回数 | 1文の方に置いた文数 | 2文の方に置いた回数 | 2文の方に置いた文数 |
15 | 0 | 0 | 15 | 30 |
16 | 2 | 2 | 14 | 28 |
17 | 4 | 4 | 13 | 26 |
18 | 6 | 6 | 12 | 24 |
19 | 8 | 8 | 11 | 22 |
20 | 10 | 10 | 10 | 20 |
21 | 12 | 12 | 9 | 18 |
22 | 14 | 14 | 8 | 16 |
23 | 16 | 16 | 7 | 14 |
24 | 18 | 18 | 6 | 12 |
25 | 20 | 20 | 5 | 10 |
26 | 22 | 22 | 4 | 8 |
27 | 24 | 24 | 3 | 6 |
28 | 26 | 26 | 2 | 4 |
29 | 28 | 28 | 1 | 2 |
30 | 30 | 30 | 0 | 0 |
この表からもわかるように、掛け声が18回のときは1文の方には6文あることがわかります。
この表を見ればわかりますが、15回から1回増えるごとに1文の方には2文ずつ増えていきますから、Aさんは
(18ー15)× 2 = 6(文)
この計算を頭の中で行って、すぐさま答えられたのでしょう。
理屈さえ知っていれば即答できますね。
授業での使い方
では、次に授業で実際にどうするか考えていきましょう。
行う単元は、先にも述べたように中学校2年生の連立方程式です。単元の導入で行ってそれ以降の学習の意欲を高めるために取り入れたり、単元をある程度学習した後に連立方程式の利用として行っても面白いかもしれません。
準備物
30文は持っていないと思うのでおはじきや磁石で代用します。黒板に付く大きめのマグネットがあると見やすくていいですね。
あとは、ノートがあればその後の活動は大丈夫でしょう。
流れ
授業が始まったらマグネットを30個を黒板に貼ります。右側と左側に大きく円を書き、それぞれの円の上に1個2個と書いておきます。
「これから、新しい単元を学習します。この単元を学習すると、これから先生がやる不思議なことがみなさんもできるようになります。黒板に貼ってあるマグネットを誰かに1個または2個に分けもらいます。先生はその様子を見ませんが、どちらに何個貼ってあるか当ててみせましょう。しかし、何もヒントがないのは流石に厳しいので、分けたときに『さぁ』と言ってから分けるようにしてください。『さぁ』と言ってくれれば1個の方にでも2個の方にでもどちらに分けても構いません。」
こんな感じで話し始めます。(内容は先生方のご自由に!)
そして、誰かを指名して分けてもらいます。先生は後ろの向きで見ないようにしましょう。
あとは、上で述べたような導き方で答えを導きます。
20回だったら15を引いて5、それに2を掛けて10個、つまり1個の方は10個2個の方は20個、という感じです。
何度か試しても百発百中だと流石に怪しくなります。
そこで、何かタネがあるんじゃないかと疑う子どもが出てくるので、そこから授業スタートです。
「先生は何度やっても当てられる自信があります。しかし、超能力者ではないので、実はちゃんとタネがあります。今日はこのタネをみなさんに考えてもらいたいと思います。」
そのあとは、各グループごとに分かれて検討します。
最初は何を考えればよいかわからない子が多いのでヒントを出します。
「先生は何をもとに答えを導いていると思いますか?もし全部2個の方に分けたとすると何回『さぁ』と言うことになるでしょうか。」
などですね。
中には、ひらいめいて考えつく子もいるかもしれません。その時には十分に褒めてその考えを他のグループに共有させましょう。
ある程度考えて上のような表ができてくると上出来ですね。考えを全体で共有しましょう。
最後に、xが1個の方に置くときの声の回数、yが2個の方に置くときの声の回数として立式します。
x+y=10 x+2y=30 |
上の式が声の回数の総数(今回は10回)
下の式がマグネットの総数(全部で30個)
これを説明し、2つの式と2つの未知数がある式のことを連立方程式ということを伝えて終了です。
以上授業での流れでした。
1個と2個だと面白くないと思う方は2個と3個でやってみてもいいかもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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