夏は部活の引退の時期ですよね。
全国一位にならない限りはどんなチームでも必ずどこかで負けます。つまり、多くの3年生は引退することになります。
僕の指導している部活動でも、つい最近、3年生が引退しました。
引退は子ども達のものという感覚がありますが、先生としても2年半の集大成です。
今日は引退した今年の3年生への指導を振り返っていきたいと思います。
前提
僕は正直部活動をガツガツやりたい派ではありません。
自分自身も部活動はずっとやってきましたが、やる方は好きですが、指導者として子ども達に教えていくことは凄く難しく、
「自分なんかが教えてもいいのだろうか、自分じゃない先生の方が子ども達にとって幸せなんじゃないか。」
ということをよく考えます。
それでも
最初は技術も心も育っていなかった子ども達が大きく成長する姿を間近で見ることができるのは先生でなければなかなかできないことだと思います。
自分の口癖や考えていることが子ども達の口から出てくるときなんかはなんとも言えない思いになります。
だからこそ、ある程度は割り切って、僕は技術より考え方を中心に伝えていこうと決めました。
部活動に対する考え方
上述しましたが、僕自身競技自体はやってきましたが、教えることに関しては自信はありません。
だから、他校の先生に聞いたり、ネットで練習法を調べたり努力はしてきたつもりです。
ですが、どうもうまくいきませんでした。
指導者という立場になると、あれもこれも指導者がリーダーシップをとり、自分の思い通りに子供達を動かそうとしてしまいがちです。
リーダーシップとかっこいい言葉を使いましたが、要するに自分が試合で使いたいコマを作るイメージでした。
だからこそ、自分の思い通りにならないと怒鳴って従わせようとしていました。
もちろん、レジェンドと呼ばれるような素晴らしい功績を残してきた指導者ならば、それでもいいでしょう。
ですが、僕は凡人です。
自分が中学生のときにできなかったことを今の中学生に求めるのは烏滸がましいです。
うまくいかないのは当たり前です。
この当時はなかなかきつかったです。
そんなとき、ある中学校の先生が運営しているサイトに出会いました。
そのサイトには、技術の習得方法はもちろん、その実践の仕方が詳しく載せてありとても参考になりました。
なかでも、練習に関してはなぜそのような練習をするのか、実際にどのように選手たちを動かせば効率がよくなるのかといったことが載せてあり、考え方の参考になりました。
このサイトで一番心に残ったのが、
技術よりも人間性を伸ばす方法を考えましょう。
という言葉でした。
今まで、自分は技術を身に付ける方法だけを求めていましたが、子供達の人間性についてはそこまで重要視してきませんでした。
ここで初めて
何のために部活動をするのか
を考えるようになったのです。
部活動は学校教育の一部です。
中学校学習指導要領総則編にも以下のように記されています。
生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。その他、地域や学校の実態に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体との連携などの運営上の工夫を行うようにすること。
つまり、スポーツの技能の向上と同じだけ責任感や連帯感などの人間性を伸ばしていくことが求められているということです。
ここから、部活動に対しての取り組み方をガラッと変えていきました。
大きく行ったのは3つです。
- 挨拶や靴を揃えるなどの中学生として基本的な礼儀を徹底した
- 部活動内の委員会を設置した
- 練習メニューを子ども中心にした
それぞれみていきましょう。
1.挨拶や靴を揃えるなどの中学生として基本的な礼儀を徹底した
人間性と言われて一番に思い浮かぶのが礼儀です。
この徹底をしました。
中学校を卒業したらもう社会人として扱われることを伝え、下記のようなことを行いました。
特に「球場や他校に行った時には来た時よりも綺麗にすること」というのは力を入れ、大会への荷物の中にゴミ袋を必ず用意していました。
試合が終わった後に球場のゴミ拾いをしたり、バスを利用した時には最後にバスをほうきで掃いたりしました。年の初めには学校周辺のゴミ拾いもしました。
これらを続けた結果、地域の方やお礼の電話をいただくこともありました。
褒められるためにやっていることではないですが、やはり続けてきたことが認められたみたいで嬉しかったです。
部活動内の委員会を設置した
部活動の中で委員会を設置しました。
簡単にいうと部活動内での役割分担です。
部活動の運営を全員で行っていこうという趣旨です。
委員会には1年生から3年生まで全員が所属します。
雑用は1年生の役割のように決めているところもあるかと思いますが、それではもったいないと思います。
せっかく1年生から3年生までの子どもが自然と交流できる部活動なのですから、もっと関わる機会を作った方が3年生もリーダーシップが身に付きますし、1年生も上級生から仕事を引き継げます。メリットは多いと思います。
委員会の内容はその時々の子供たちが考えたのですが、なかなかバラエティに富んだものもできていました。
案内は、自校で練習試合を行う時に相手チームに挨拶と案内をする役割です。
工作は、段ボールを駆使して練習道具や得点板を作成しました。
荷物積み込みは、他校で練習試合を行う時に先生の車に荷物を積み込みます。
部室整頓は、部室がいつも使いやすいように整理しました。
MVPは、一日の練習でのMVPを終わりのミーティングで発表しました。学年ごとに一人ずついるので、意外と盛り上がります。
ボールチェックは、練習の最初と最後にボールを数えます。ボールを含めて練習道具は大切に使います。(仮に先生が落ちているボールを拾うと連帯責任です。)
分析は、練習試合のスコアをまとめます。打率や三振率、四死球などをデータとしてみると意外な発見があります。
子どもたちにとって自分が所属している部活動は、他にも色々な部活動がある中から選んだ唯一の部活動です。
自分で選んだ部活動なら自分で運営をした方が所属感を感じられると思います。
練習メニューを子ども中心にした
これは個人的にはかなりおすすめです。
練習メニューを子ども中心にします。
何を子ども中心とするかですが、
練習メニューを考えるのは子ども&練習を教えるのも子ども
です。
練習をするとき、僕のチームではメニューを考えるのは子ども達です。
キャプテン、副キャプテン、下級生リーダーがメニューを考えて先生が修正します。
先生が忙しい中メニューを考えなくても、子ども達だけでもメニューを考えることはできます。
練習試合を通して自分たちのチームに必要なことは理解していますから的外れなメニューは考えてきません。
もちろん、そもそも知らない戦術は練習できませんから、そういったことは先生の時間があるときに教えておき、実際に試合で試してみます。
ここまでやれば、キャプテンとなる子なら、それ以降の練習メニューの選択肢に入るでしょう。
先生がどうしてもこれがやりたいというのであれば、修正する時に加えればいいだけですしね。
そして、もう一つが練習を教えるのも子どもです。
練習メニューはどんな形であれ、うちのチームではグループ練習が基本です。
いくつかの練習をグループに分けて15〜20分で回します。
メリットとしては、以下の2つですね。
- 全員で同じ練習をするわけではないので一人当たりのボールに触れる回数が増える
- 細かいメニューをたくさんこなすことができる
どんな練習であれ、グループに上級生が必ず入るようにしています。
そこで、上級生が下級生に練習のポイントを話すように指示します。
そうすることで、先生が一人一人見なくてもお互いでチェックすることができます。
全部が先生の指導だと一つの視点からしか見ることができません。
グループ練習にすることでたくさんの視点が入り、より深く理解できます。
勉強と一緒ですね。
こうした練習を繰り返すことで、最初は自信が無かった初心者の上級生も経験者の下級生に指示することができるくらいに成長しました。
何事も繰り返すことが大切です。
特に自分の意見や考えを人に伝えることは慣れていないとなかなか難しいです。
大人だってそうですよね。
このグループ練習は自分の考えを相手に伝える練習にもなり、上級生が全員リーダーの経験ができるので責任感も生まれます。
まとめ
引退する時には後輩に向けて一言ずつメッセージを送るのが伝統になっています。
今年度の3年生もみんな自分の言葉で感謝だったり激励だったりを伝えてました。
その中で、キャプテンが僕に言ったことが
「先生は自分のフォームに関して意見は言ってくれましたが、基本的には自由にさせてくれました。そのお陰で最後まで自分が考えたフォームで悔いなく終われました。ありがとうございました。」
自分のやってきたことが子ども達のためになっていたと初めて実感できました。
全員に対してうまくいくとは思っていませんが、少なくともこの言葉は僕にとってとても勇気をもらいました。
子ども自身に考えさせることは、一見すると何も言わずに指導を怠っているように見えるかもしれません。ですが、明確な意図をもって行うことができればそれも立派な指導だと思います。
これからも、自分にできることとできないことをはっきりさせてできることに集中していきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。