勉強やスポーツを教える立場だと、多くの子ども達と関わることがあります。
その中で、
もう無理だ。
これは私にはできないよ。
と、
すぐに諦めてしまう子が多くなっている気がします。
同じように思っている方は多いはず。
こうした子はレジリエンスが低い傾向があります。
レジリエンスとは、心の回復力のことで、アメリカ心理学会によると、「逆境やトラブル、強いストレスに直面したときに、適応する精神力と心理プロセス」と説明されています。 |
簡単に言うと、壁にぶち当たったときにも立ち直れる力のことです。
レジリエンスが高い子どもは、勉強でも運動でも、少しうまくいかなくても諦めることなく努力を続けることができます。努力を続けることができるので、結果的に多くの成功を手にすることができます。
一方、レジリエンスが低い子供は、「何をやってもだめだ…。」という思いが強く、少しつまづいてしまうだけで諦めてしまいやすくなります。挑戦回数が少なくなるので、成功体験を得られません。長期的にみると、挑戦すること自体を恐れるようになり、狭い世界で生きていかなければならなくなります。
レジリエンスが高い子と低い子、どちらが将来成功するかは火を見るよりも明らかです。
そして、イースト・ロンドン大学のイローナ・ボニウェル博士は、このレジリエンスは後天的に筋肉のように鍛えることができるといっています。それで編み出されたのが、
『レジリエンス・マッスル』というプログラムです。
「若いうちからたくさんの失敗をするといい。」
とよく言われますが、失敗するたびに心をすり減らしてしまうと、挑戦することすらしなくなってしまいます。
そうならないためにも、いざ逆境や困難に直面したときにレジリエンスを発揮できるよう、心の筋肉を鍛えておくことが大切です。
レジリエンスを鍛えるためには
レジリエンス・マッスルには4つの構成要素があります。
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これら4つの要素について、自分でまたは大人と一緒に考えることで自分に自信がつき、レジリエンスが高まることが期待されます。
では、それぞれ見ていきましょう。
「I am」(私は〜である)
自分はどういう存在なのかを考えましょう。
考えるときには、自分の長所や自信を感じるところを言葉に表します。
自分の強みを言語化して自分で見ることで、レジリエンスが高まります。
「やさしい」「がんばりやさん」「おもしろい」など、自分で考えたり、家族や友達に聞いてみるとその子の長所や強みが言葉で表すことができます。
ただ、自分のよさや強みがわからない子どもが増えています。
というより、日本人自体が自己肯定感が低い傾向があります。
平成30年度(2018年)版の内閣府調査でも、「自分に満足」という人の比率は、欧米諸国で80%台なのに対して日本では40%台、「自分には長所がある」という人の比率は、欧米諸国では90%前後なのに対して日本では60%程度。(参考:内閣府)
この調査の調査対象は、13〜29歳です。中学生以上の子どもですら自分の長所について自分で理解していませんから、小学生ではなおさらでしょう。
そこで、おすすめなのが「ポジティブリフレーミング」です。
リフレーミングとは「枠組み」のことです。
簡単に言うと、どんなネガティブなことでもポジティブに言い直しちゃおう!という感じ。
例えば、
うるさい → 意見を素直に言える
落ち着きがない → 色々なことに興味がある 臆病 → 慎重に行動する 心配性 → 失敗が少ない 自信がない → やってみたいという気持ちがある |
このように一見ネガティブなことでも、見る視点を変えるとポジティブな面があることに気付きますね。
子どもが、ネガティブな特徴を言ってきたらそれを大人がポジティブリフレーミングして肯定してあげましょう。
もし、リフレーミングが思い付かない場合はgoogleで調べるとすぐに出てきます。
「I can」(私は〜ができる)
自分ができることを見つけてみましょう。
できることと聞くと、「ナンバーワン」じゃないとダメだと思ってしまう子が多いかもしれません。
そんなことはありません。
「妹や弟の面倒をみることができる」「朝一人で起きられる」「お手伝いができる」「好き嫌いなくなんでも食べられる」「一人で学校に行ける」など、子どもでも自分が「〜できる」と言えることはたくさんあります。
そんな「できること」をひとつずつ、一緒に考えてあげましょう。
できることを言葉で書いてみると、ノート1ページには収まりきらないほど出てきます。そうすることで、「自分にはこれだけのことができるんだ」と自信をもつことができます。
中々、思い浮かばないときには、過去の自分と比べるとたくさん出てきます。
「去年と比べて漢字をたくさん覚えられた」「去年と比べて割り算ができるようになった」「去年と比べて自転車に乗れるようになった」などです。
子どもは日々成長しています。間違いなく成長しています。意識していないだけです。
それを少し大人が手助けをして引き出してあげましょう。
「I have」(私は〜をもっている)
自分が持っているものを見つけてみましょう。
「小さい頃から大切にしているぬいぐるみ」「お小遣いを貯めて買った望遠鏡」など身の回りにはたくさんの思い出深いモノがあるはずです。
それらを書き出しましょう。
また、モノでなくても大丈夫です。
しかし、「頼りになるお父さん」「料理が上手なお母さん」「やさしいおばあちゃん」「なんでも知ってるおじいちゃん」「アドバイスをしてくれる習い事の先生」など自分の周りにいる人もここに入ります。
「自分の周りにはこんなにも味方が多いんだ」と感じられると、安心して物事に挑戦することができます。
「I like」(私は〜が好きだ)
自分が好きなことを見つけましょう。
野球、サッカー、水泳、ダンス、歌、走ること…など、得意なことでもできることでもなく、ただ『好き』だと言えるものを子どもと一緒に挙げていきましょう。
習い事に縛られる必要もありません。
遠足で行った登山や水族館、動物園がきっかけで山や魚、動物が好きでもいいですよね。
好きなものを思い浮かべてポジティブな感情が積み重なると、ドーパミンという脳内ホルモンが分泌されます。
よくスポーツの中で言われますよね。
野球で満塁で自分にチャンスが回ってきたり、サッカーでPKのチャンスなどの場面でもドーパミンが分泌されます。
ドーパミンは脳を覚醒させるので、逆境や困難に直面しても乗り越えようとする意欲をかき立てます。
男の子だと【ゲームが好き】だという子がめちゃくちゃたくさんいます。
ゲームが好きでももちろんいいです。しかし、詳しくできるのであれば、どんなゲームなのか、そのゲームのどういうときに好きだと感じるのか、などを掘り下げられるとより新しい視点が加わります。
まとめ
以上今日はイースト・ロンドン大学のイローナ・ボニウェル博士の『レジリエンス・マッスル』を紹介しました。
もう一度確認すると、以下の4つです。
- 「I am」(私は〜である)
- 「I can」(私は〜ができる)
- 「I have」(私は〜をもっている)
- 「I like」(私は〜が好きだ)
これら4つに共通することは、子どもが自信をもって物事に取り組むことができるようにすることです。
定期的に子どものレジリエンスを高めていけるといいですね。
また、大人の普段の言葉遣いも子どもに大きな影響を与えます。
普段から子どもを認める言葉掛けを意識していきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。